おまけの後日談
「それで夢の中で、僕が出した問題はとけたのか」
「解けたんじゃないかな。だってコウ、エッチしてくれるんだろ?」
香澄がご機嫌で身体の上に覆い被さってくる。
「あっ…」
敏感な所を舐められて、思わず声が出た。
「なんだか、スフィンクスみたいだな」
「へ? スフィンクスって、あのエジプトのヤツ? 人の顔に、犬みたいな胴体の」
「ライオンだろ?」
「犬じゃないのか。ずっとそう思ってた。あれはピラミッドの番犬で、犬なんだって」
「支配者の守護は、間違いないみたいだが。そうじゃなくて僕の言っているのは、ギリシャのスフィンクスだ」
「はあ、ギリシャ」
全然色っぽくない話題に、香澄は少々興をそがれたようだった。
それをチラリと見た黒羽は、唇を舐めると頭を下げて、香澄のモノを深く咥え込んだ。
「うっ…。あ…」
「ん…」
「コウ、すごくいい」
黒羽は舌を使って香澄のそれを愛撫する。
「コウ、ちょっと、それ以上、オレ…」
「早いぞ香澄」
「だっ…久しぶり…」
「まだダメだ」
黒羽はあっさりと口を離す。
「ああっ、あとちょっとでイケたのにっ…」
「だからダメだ。もう少し僕を楽しませろ」
「ううう…」
ちょっぴり恨めしそうな香澄を見ながら、黒羽は唇を曲げて笑う。
「いいじゃないか。一生エッチ無しはないんだから」
「そらまあ、そうですけどね」
再び香澄が覆い被さる形になり、黒羽の身体をあちこち触り始める。
「ギリシャのスフィンクスは、人間になぞなぞをしかけるんだよ」
「へええ」
「それで、謎が解けないと、その人間を喰ってしまうんだ」
「そいつは怖い。じゃあオレ、もしも答えを間違っていたら、コウに喰われちゃったのかもしれないな」
「僕が出したのは、どんな問題だったんだ?」
「そんなん覚えてる訳ないっしょ。何でそんな事気にする訳?」
「いや、なんとなく…」
僕はどんな問題を出したのだろう?
そして香澄が、もしも答えを間違えていたら、今どうなっていたのだろう。
「コウ、なあ、コウ。もういい? いいよな」
その部分を触りながら、香澄が我慢しきれなくなったように聞いてくる。
「今日はせっかちだぞ、香澄」
「だから久しぶりなんだってば」
「いいよ」
苦笑しながら頷くと、香澄がそれでも身体を傷つけないように注意しながら、ゆっくりと入ってくる。
その感覚に黒羽も体を震わせた。
「香澄…あっ…」
何度も名前を呼ぶ。
呼ぶことで、彼をよりいっそう感じることが出来る。
香澄がもしも問いを間違えて答えていたら。
こんな風に名前を呼び合うことはなかったのかもしれない。
不思議にそんな気がした。
帰ってくることなく、名前を呼べない場所に僕たちは行ってしまったのだろうか?
「コウ」
「香澄…ああっ」
切れ切れの思考は、身体の感覚に呑み込まれて消えた。
僕と香澄は二人ともここにいる。
それだけでよかった。
それは奇跡のような偶然だったのだから…。
「スフィンクスのなぞなぞって何?」
シャワーを浴びながら、思い出したように香澄が聞いてくる。
「ん…」
黒羽は湯船の中にゆったりと浸かっていた。
ラブホテルの利点は、いくら声を出してもいい所と、思ったより広い風呂だ。
(中でセックスすることを考慮しているのだろうか?)
手足を伸ばしながら、まだじんわりと身体の中に残っている、快感の心地よい残り香を味わう。
「たしか、朝に4本足、昼に2本足、夕に3本足のものは何か、だったと思うが」
「なにそれ」
「答えられないと殺されるぞ」
「えっ、ええっ? えっとー、その、男?」
「惜しい。答えは人間だ」
「何で?」
「人間は赤ちゃんの時はハイハイしているから、4本足で歩く。やがて2本足で立つようになり、年をとると杖をつく。だから3本足」
「何となく、こじつけっぽいなぞなぞだな」
「なぞなぞなんて、そんなものだろう? ところで香澄の答えは、どうして男なんだ?」
「えええー?」
香澄はちょっと口ごもると、それから舌を出して言った。
「だって、男はいつも3本足じゃん。特に夜はさ」
「ぶっ…」
思わず吹き出す黒羽に、香澄は近寄ると、さっさと湯船の中に入り込んできた。
「よせ、狭い」
「密着、密着。つうわけでさ、3本足だから、な…」
手が前に回ってくる。
「またする気か。元気すぎるぞ」
「それが取り柄♪」
黒羽は笑いながら白鳥の唇にキスをした。
END
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