Another One Scene

「コウ…」
香澄はため息と共に呟いて、ゆっくりと黒羽の身体を後ろから貫いた。
浴槽いっぱいにたちこめた湯気が、黒羽の身体をしっとりと濡らす。
その肌。
唇をあてる。
どこまでも白く、そしてなめらかな感触。
思わず舌を出して、ちろちろとなめた。
快楽の声と共に、水滴がぽたりと落ちる。
黒羽はガラスに手を突いて、香澄が入りやすいように身体を開いた。
既に彼を受け入れるための準備はできていた。

だんだんと、慣れてきたその行為。
だが香澄の手は、まだ幾分ぎこちなく黒羽の感じる所を捜して、身体のあちこちをまさぐっている。
すっかり勃ちあがった中心に指が触れると、黒羽の唇から、押し殺したような声が漏れた。
香澄は形を確かめるように、黒羽のそれを擦りあげる。
「う…ふ、あぁ…。いい、かすみ…」
声を聞きながら、香澄は後ろの部分に自分のモノをあてて、途中までゆっくりと侵入した。
それからいきなり、ぐいっと腰を突き上げる。
「あっ…あああっ」
黒羽の唇から漏れる声が、大きく跳ね上がった。

 

 

 
このホテルは、オレ達がまともな最初のデートをしようとした時に、偶然入ったラブホテルだった。
ここでオレ達は、初めてちゃんと恋人同士のようなセックスをしたんだ。
別にフツーのホテルだけど、でもオレにとってはいい想い出のある場所。
だからまた来た。
今度はちゃんとジャグジーも二人で入って、オレは湯船の中で、ちょっぴりコウの身体に悪戯しちゃったりして。
コウはオレのこと睨んだけど、でも楽しそうだった。

「ここで、しよ」
オレはコウを抱きしめて、耳元で囁く。
甘い言葉もかけられるようになったんだぜ。
そりゃー、まだまだ修行不足かもしれないけど、でも前よりコウを娯しませてあげることも、よくしてやることもできるようになったと思う。
「ここで?」
その証拠に、コウの声だってずいぶんと甘い。
「もうこんなだから。ベッドまで持たない」
オレは、コウの身体に自分のモノを押しつける。
「…香澄」
コウのそれも硬くなっていく。

オレはコウにキスをして、思う存分その唇を貪った。
細い腰に手を回して、感触を楽しみながら撫でまわす。
お互いに、お互いの身体が欲しい。
なんてエッチで、なんて充実した気分。



曇ったガラスに、更にコウの息がかかる。
せつなげに伏せられた瞼と、長い睫毛がゾクゾクするほど色っぽい。

「コウ、全部、挿入った」
オレはわざと耳元で囁く。囁きながらコウの中を楽しんだ。
少し、余裕が出てきたのかな、オレ。
コウのいい所を探るように体を揺さぶると、コウが次の行為ねだってくるのが解った。
「香澄、お願い」
物足りなくなってくるんだよな。コウは激しくやられるのが好きだから。
もちろんオレは、いきなり激しくなんてしない。
じらして長引かせて、コウの身体を娯しむんだから。
「いいよ、コウ」
でもオレはそんな風に耳元で囁いて、後ろからコウの身体を押さえつけるようにして動いた。
最初はゆっくりと。それからだんだん激しくしていく。
「香澄…ああっ! ああぁっ」
コウの身体が、オレの動きに応えるように跳ねた。

後ろからなので表情は見えないけど、コウのあげるせつなげな声が、ひどくオレの欲情を煽った。
コウの中でオレ自身が、堅く、巨きくなる。

オレだけのコウ。
ずっと、こうしていたいよ。
二人っきりで、誰も入れない場所で、ずっとこうやって愛しあっていたい。
コウの中をオレでいっぱいにして、オレだけに感じて欲しい。



「香澄…っ」
体を震わせ、背を反らして、小さな声と共にオレの手の中でコウが達した。
ガラスに飛び散る、コウのそれ。
コウの快楽の印。
透明なガラスを伝い落ち、湯気にぼやける。
コウのそんなものにも、オレは欲情した。

すごく、いやらしい。
エッチだよ、コウ。
そして綺麗だ。

がっくりと、コウは身体の力を抜いて、ガラスに身体を預ける。
その白い身体を押さえつけるようにして、オレは後ろから何度も腰を突き上げた。
上気した熱い身体。
滑らかな、その肌。
緊くオレ自身を包んで受け入れてるあそこ。
コウに中に、オレはいるんだ。
コウの中は、オレが良いって言ってる。
吸い付くように締め上げる、堪らないその感触。

「コウ、こう…っ」
「香澄…。かす…。あ、あぁっ」
コウの中でオレははじける。
快楽の声と共に、オレは自らの欲望をコウの中に放った。

「ああ、ぁ…」
コウの甘いため息が、オレを満足させる。
「香澄。すごく…。すごく、なんだか…」
「なんだか、何?」
「今日は、すごく激しい。どうした…」
「いつも激しいじゃん。コウがそういうの、好きだからさ」
「でもその…気持ち、良い」
うっとりと瞳を閉じる。
なんか、ホントに気持ちよさそうだ。

「香澄、もっと…」

もちろんコウのそんな顔を見てたら、オレのモノは再びムクムクと起き出してきてしまった。
な、何度でもできそう、オレ今。
ここのホテルって、もしかしてオレ達相性いいのかも。

「ああ、もっとしよう、コウ。ベッド行こう」
オレはコウを抱きしめてキスした。
今日はずっと放さない。
もっともっと、まだまだオレ達よくなるんだから。
コウがキスに応えて、オレの身体を抱きしめた。

外は雨が降っている。
オレとコウは濡れた身体のまま、ベッドの中に転がり込んだ。
雨は当分、やまないはずだった。

END

 戻る    メニューへ