初めてな夜♪



 コウがシャツに手をかけて、ゆっくり脱ぎ始める。
「おっ…オレがやるよ。やらせて」
オレは慌てて手を伸ばし、黒羽さんのシャツのボタンを外していった。
上からひとつひとつ。
少しずつ黒羽さんの肌が見えてくる。
うー…メッチャドキドキする。
素っ裸なんて何度も見ちゃってるのに、改めてこんな風に脱がせていくと、何か違うよなぁ。
だってその。これから黒羽さんと…今度こそセックスするんだから。

「香澄、今夜…」
耳元で囁かれた時、一瞬何のことか解らなかった。
だけど次の言葉で、オレは真っ赤になってしまった。
「用意、できたから」
よ、用意って。用意って、やっぱりアレ?
心臓の音が外まで響いてきそうだ。うん、もちろんオレだってオッケーだ。
あれ以来、あの夜のことを思い出すたびに、オレのナニは反応しちゃって反応しちゃって、なだめるのが大変だったんだから。
コウと…えっち。
は、初めて女の子とした時より、ドキドキしてるかもしれない。
オレは不器用にボタンを外しながら、ついチラチラと辺りを見てしまった。
いろいろ、その、用意したのかなあ。
用意したって、ナニを? まさかバイブとかは、無いよ…ね?
だけどその、その前に。大丈夫か?
オレってばちゃんとできる?


エッチしちゃってもいいんだ。
オレと黒羽さんがエッチする。そういう関係もアリなんだ。
そう思った途端、オレは心が軽くなった。
だけど、黒羽さんの方は、どうなんだろう。
いいっていったし、したくないなんて事はないと思う。でもさ。
心が軽くなったのと、ちゃんとセックスできるのとは違うもんな。
下手くそとか思われるのはヤダし。
そりゃー黒羽さんの方が年上だし、どう考えても経験もオレより豊富そうだ。
(どれくらい豊富かはオレには見当付かないけど)
だからまあ、向こうがリードをとる事に絶対なるとは思う。
いくらビデオで予習したって、ビデオ通りにする訳にはいかないしな。

実はオレも、もう少しくらい男同士のエッチについて調べてみようと思ってさ、ネット検索とかもしてみたわけよ。
だけど…。どうやら海外サイトに行き着いたらしく、大量の無修正画面(もちろん男だ)にぶちあたって、ほうほうの体で帰ってきた。
げほげほ。
オレだって男とエッチしようと思っている訳だから、ナニの一本や二本くらい覚悟してたよ。
だけどさ、知らない男のナニなんて、まじまじ見てられっか!
人のを見るくらいなら自分のを見るぜ!
(それじゃ意味無いじゃん…とほほ)
とりあえずオレには男の下半身を見て興奮する趣味はないんで、速攻で帰ってきた。
…わけなんだが。
まあ結局、そのザマで黒羽さんに全部用意させた格好になってしまった。
ありゃりゃ…。

 

 

だからオレは今、せめて服くらい脱がそうって思ってる訳。
だってその後どうしていいか解らないから。
せめて服くらいオレが脱がさなくってどうするよ。
黒羽さんはもしかしたら普段はもっと積極的なのかもしれないけど、オレのぎこちない動作に、ちょっとなすがままになってくれてた。
でもこうして脱がしていくと、ドキドキする。
白い肌にピンクの乳首がすごく艶かしい。
見てると舐めたくなっちゃうけど、ズボンも脱がさなきゃ…。
ズボンに手をかけると、黒羽さんがキスしてきた。
初めての黒羽さんのアクション。
キスなら何度もしている。
オレは思わず瞳を閉じて、黒羽さんの唇の感触だけを味わった。

いいなあ。
とってもいい。
今日はこれから、キスの先まで…いくんだ。
甘い期待が、じいんと全身に湧いてくる。
オレ、すっごく嬉しい…。

と、次の瞬間
「んっ…んん」
オレは目を見開いてしまった。
だって、いつの間にか黒羽さんがオレのズボンの前を開けて、触ってきちゃってるのだ。期待で半勃ち状態だったオレのナニは、黒羽さんの指によって、たちまち上に向かって張り切り始める。
うひゃあ、ちょっと。
オレ、オレ…。オ…

気持ちいい。すご…。
うっ。指が、撫でて…。絡みついて。

「香澄…」
唇を離して、黒羽さんが囁いた。
「巨きいな…」
えっ、えっ、ええっ?
黒羽さんの目が、少し潤んで熱を帯びている。
興奮してるの? 黒羽さんも? それって、う、嬉しいかも。

なんかもう、よく解らなくなってしまった。
どっちがどっちってわけでもなく、お互い服を全部脱ぎ捨てる。
裸になって、抱き合ってキスする。
そのままベッドの中に転がり込んだ。
オレが上で、黒羽さんが下。
黒羽さんの下半身が、熱くあたってくるのが解った。
黒羽さんも…コウも…したいんだ。
オレはちょっと感動する。
したいって思ってくれてる。
オレだけじゃない。オレだけの一方的な想いじゃないんだ。
何処がどうしているんだかイマイチよく解らない女の子と違って、男の身体は正直だった。
ちゃんと、勃ってる…。
オレとしたいって、思ってくれてる。

オレはのしかかる形でキスしながら、下半身の昂りに手を伸ばした。
軽く触れて、それから握る。
黒羽さんの身体が、びくりと震えた。
ああ…。なんか凄くいいよ。
海外のホモサイトなんか覗いちゃって、引いて帰って来ちゃったもんだから、ちょっとだけ心配してたんだ。黒羽さんの男の裸を見て、オレ、セックスしたくなるだろうかって。
全然、心配なかった。
女の子と違うから、少し違和感はあるけど、でも女の子よりも感じる場所は解りやすい。
黒羽さんの眉が色っぽく顰められ、口からは吐息が漏れ始める。
もしかして、感じてる?
オレは夢中で手を動かした。
「あっ…ああ…」
声出してる。
黒羽さんの反応に、オレは興奮した。
だって、だってさ。ちゃんと感じてくれてるんだ。そう思うと、もっと触りたくなっちゃうぜ。どこ? どのへんがいいの?
やたら触りまくってるうちに、自分の下の黒羽さんの身体が熱くなってくるのが解る。オレの身体も、熱を持ってきた。
「香澄、香澄も…」
黒羽さんの手がオレの身体を触り始める。もちろん肝心な部分にも、再び指が伸ばされて、どうしようオレ、って言いたくなるくらいの愛撫が加えられる。
うひゃあ…。で、出ちゃうんですけど。
前の時は結局イかなかったから、今度こそ待ってました、かもしれないけど、でもでも、オレ、黒羽さんの、コウの中でイキたいよ。
最初は絶対、外で出しちゃうのイヤだ。

「黒羽さん、オレ…黒羽さんの中で…」
黒羽さんは解ったのか、触るのをやめて、体を起こした。
そしてベッドの脇に置いてあった瓶を取り上げる。
も、もしかして、それが『用意したもの』?
黒羽さんはチラリとオレの下半身に目を走らせる。
うっ…。この間途中でオレ、萎んじゃったもんな。でも今は大丈夫。
「ラブローション、潤滑剤です。使った方が、きっといいと思うから」
お…男は濡れないもんな、うん。
とか思っていたら、ひょいと瓶を手渡された。えっ、えっ? オレ?
黒羽さんはベッドの上に這って膝を立てる。
「僕がやってもいいんですけど、香澄に慣れてもらった方がいいから」
オレはローションの瓶を片手に、心臓が口から出そうなくらいどきどきする。
「それをここに塗って」
「う、うん」
声が掠れる。
いよいよだ。やっぱり緊張するよ。女の子との時より、緊張する。
ああ、でも。オレが緊張しててどうするんだよ。
黒羽さん、あんな格好で。オレがしたいって言ったんだろ?

オレは目を開いて、黒羽さんの身体を見つめた。
綺麗だな、と思う。
ポスターで見てた時は、身体なんか解らなかった。身体も、綺麗だ、この人。

コウ…。

心の中では何度も読んでいた名前を、もう一度呼んでみる。
うん、ちょっと落ち着いてきた。
コウの、白くて滑らかな肌。ずっとアンダー育ちで、本物の太陽に当たっていないコウの身体は、透けるように白い。
もともと色白なんだろうな。
そっと手を伸ばしてふれてみる。
かすかにぴくりと、コウが緊張したのがわかる。
そうか。
コウだって、緊張するんだ。
少し、気が楽になった。
オレだけが緊張してるんだと思ってたよ。

綺麗な曲線を描く背中のライン。腰、それから脚。程良く筋肉が付いた男の身体なのに、全然ごつくない。まるで彫刻を見るみたいに完璧だ。 
そして、その脚の間の、隠された場所。
オレの前に晒されて、オレが触るのを待ってる。
オレは堪らなくなってコウの脚にキスした。そう、順番にやっていけばいい。脚、それからもっと上に。
そうしているうちに、自分がどうしようもなく興奮してることに気づいた。
もちろんさっきから、ビンビンだったんだけど、それとはまた違ってさ。

オレ、やっぱりこの人が好きだ。
この人とセックスしたい。
二人で、気持ちよくなりたい。
身体を合わせて、この人の心臓の音を聞きたい。

そんな、嬉しくってドキドキする気分。

「香澄?」
黒羽さんが不思議そうな顔をしてオレの顔を見た。
「ここに、そのローションを」
うん、うん。解ってるよ。
オレはローションを手にとって、その部分に滴らした。
どうすればいいのかな、ええと。指とか…入れていいのかな。
(これからナニを挿れようってのに、どうしてそんな事迷うかな、オレ)
ぐずぐずしていると、まるでじれたように黒羽さんの指が伸ばされた。
指は滴らされたローションを、自分の中に導き入れていく。
うわっ…ちょっと、かなり刺激的。
「こう…やって」
掠れた声。挿れられた指。中の…ほうまで。
めちゃめちゃ厭らしくない!? この状態!
濡れた音をたてて、指が出入りする。指の間から覗くピンク色の内部。
オレ、もうダメ…。
た、たまんない。

「コウ!」
オレはもう何がなんだか分かんないうちに、コウの中に押し入っていた。
「あっ、あぅ、か、すみっ」
背を仰け反らして、コウがオレの名前を呼ぶ。
さっきまでゆっくりやろうとか、ちゃんとできるだろうかとか、いろいろ考えちゃってたけど、全部ぶっ飛んだ。
いま完全に、オレの頭の中は真っ白になっていた。
「コウ、コウ…こうっ」
ひたすら、もうよく解らなくなっちゃったまま、ただ名前だけを呼ぶ。

すげえ…。
今、黒羽さんと、レフトハンドショットガンと、コウと、セックスしてるんだ。
初めて見た時から、もう心奪われてた。
絶対また会うって、そんな風に決めてた。
あんたが知らなくても、忘れてても、オレはずっとずっと、忘れた事なんて無かったよ。
憧れだと、そう思ってた。
大切な、オレの『正義の味方』
それが、恋に近いものだって気付くのに、そんなに時間はかからなかった。
もっとも、どれだけ恋しちゃったって、こんな風になれるなんて、やっぱり夢みたいだけど。

オレ。どうしよう。
すごく好きだよ。世界で一番、誰よりも。
あんたが好きだ、黒羽 高…。

 

 

なーんて。
心の中はふわふわ夢見心地だったけど、身体の方はそうはいかない。
ハッキリ言って、オレにまったく全然余裕はなかった。
余裕どころか、予想外にコウの中はきつくて、熱くて。
ヤバイよ、ここのままじゃ。ビデオの予習なんて、まったく無力だ。
大体こんなんじゃ、コウだっていいかどうか…。
なんて頭の隅では思うけど、身体が言うこと聞かない。
「コウ、コウ…っ」
オレはただ夢中で名前を呼んで、本能のままに動いて、ひたすらコウの身体に腰を打ち付けて、
あっというまにコウの中に放ってしまった。

……。

早すぎ…。(泣)
それに、よかったのか? 出しちゃって。
コウの中でイキたいとは思ったけど、いきなりオレ入れちゃったし、本当はコンドームとか…するべき、だった?
おそるおそるなオレに、黒羽さんは
「香澄?」
と戸惑ったような声を出した。
「ええと…その。あの」
なんて言ったらいいのか、解らない。
こんなんじゃあ、全然ダメだよなあ。いきなり突っ込んで、さっさとオレばっかりイッちゃって…。
「香澄、続けて」
「え?」
「動いて…欲しい。香澄のモノ、気持ちいいよ。だから…」
コウの瞳が、チラリとオレを見上げる。
…ぐらり。色っぽい。
メチャクチャ、下半身直撃。
「あっ…」
開かれた唇から、小さく声が漏れる。
ええと、オレのがコウの中でまた巨きくなったから…かな?
もちろんオレは若いから、一回イッたくらいじゃ全然元気だし。コウの声ってのがまた刺激的で…。
「ん…うぅん…」
コウの腰が動き始める。唇からため息が漏れだして、コウの中が巨きくなり始めたオレ自身を、引き込むようにうねって蠢き始める。
「うわ…コ…ウ」
「香澄、お願い。僕も、気持ちよくなる…から」
コウの少し掠れた声が、オレを誘う。

信じられない。
いつもこれでもかってくらいストイックなのに、セックスになった途端、この変わりよう。
どうにかなりそうなくらい、色っぽい媚態。これ、天然なのか?
白い身体を組みしいて、もっと声を出させたくなる。そんなヤバイ気分になっちゃう雰囲気があるよ。
オレが再び動き始めると、コウは甘い声を出した。
「ああ…いい。香澄」
コウの中はローションとオレの出したものでぬるぬるになっている。
オレはコウの腰を押さえて、一気に深く身体を入れた。
「あああ…っ」
白い喉が上がって、背中が反る。

誰も。
警察のみんなは誰も知らないんだろうな。
コウの、こんな姿も、こんな声も…。 

「コウ、好きだよ」
オレはコウの背を抱き締めて、ゆっくり動く。
前にも手を伸ばして、コウの勃ちあがったものを探る。
今度は、ちゃんとやらなくちゃ。
コウに喜んでもらえるように。二人で気持ちよくなれるように。
セックスって、そういうものだよな。
失敗とか、成功とか、もういいや。
オレは、経験とかあんまり無いし、下手くそかもしれないけど。
でも、好きな子とセックスするのはサイコーだってことくらいは解ってる。

だから今、オレはサイコーだ。
最高な気分。
好きだよ、コウ。
大好きだ。
ストイックな昼間のコウも、誘っているベッドの上の色っぽいコウも。
こんな風になれて、本当によかった。

今まで何人かの女の子を好きになった。
その気持ちも、嘘じゃないとは思う。
でもね、誰よりも誰よりも、オレはずっとコウが好きだったんだ。
長い間、ずっとコウに逢えることを、夢見ていたよ。

今日初めてこんな風になって。
そしてこれからも、何度もセックスしよう。
いいよな、コウ。
だって、オレ。
あんたのことが凄く好きだって、言葉でも身体でも言いたいから。
何度も何度も、言いたいから…。

END