雪山で二人っきり



「コウ、大丈夫かコウ。寝ちゃダメだ!」
うとうと目を瞑りかけた黒羽の頬を、白鳥が軽く叩く。
「ダメだ…香澄。もう…」
「コウ、ダメだってばっ!」
洞窟の中に ばちこーん! という破裂音が響く。
「かっ、香澄、思いっきり叩いたな…」
何となく恨みがましい目で黒羽が白鳥を見上げる。
「でも目、覚めただろ」
「絶対しかえしだ…」
呟いて睨む黒羽の視線に、白鳥は口笛を吹く。
そう実は、彼の頬にも、くっきりと付いていたのだった。
黒羽が叩いた指の跡が。
一度先に寝かけた白鳥は、黒羽によってたたき起こされていた。

っていうか、ぶっ飛ばしたの間違いだろう?
手加減というものを知らんのか。
しかも恋人にたいして。
はっきり言って一メートルくらいぶっ飛んじゃったよ、オレ。
綺麗なお花畑と、川の向こうでにっこり手を振るおばあちゃんの幻まで、一瞬見えちゃったじゃないか。
(バアちゃん、まだ生きてるけどな…)
実は助けるフリして、逆に殺すつもりなんじゃないだろうか。
そんな疑いをオレが抱いた所で、誰も文句は言わないと思う。
だがまあ、これで仕返しも済んだし。
(実はじっくり待っていたのだオレは。コウがうとうとするまでな。
執念深いって言うか、粘りの刑事魂というか←違う!)
とりあえず今度はご機嫌をとっておこう。

「よーし解った、こういう時は裸で抱き合うんだよ」
「裸で?」
「そう、一人だと体温を奪われるだけだ。それで眠ったらもうお終いだ。
だからこういう時は裸で抱き合って暖めあう。そう決まっているんだ。それが雪山で遭難した時の法律さっ!」
「法律か…。それなら守らなきゃ…」

コウは法を守るとか言うことに、とっても弱い。
しかもやはりこの寒さで頭が働かなくなっているらしい。
なにやら即座に、すっぽんぽーん、と景気よく脱いでしまった。
「は、早っ…。待てよコウ。二人で脱いで、んで暖めあわないとっ」
オレも当然ぱっぱと脱いだ。
だって裸のコウを、そのまんま放っておく訳にはいかないじゃないか。



服を上から羽織って、裸で抱き合う。

「………」
「…………」
「香澄」
「はいな」
「下半身に、なにか硬いモノが当たるんだが」
「気にしないように」
「…元気だな」

「………………」
「………………………」
「なあコウ」
「なんだ?」
「裸で抱き合ったら、結構暖かいよな」
「そうだな」
「あのさ、抱き合ってこれだけ暖かいなら、このまんまエッチしたら、更に暖かくなるような感じがしない?」
「…あんまり体力を奪うようなことは、やめた方がいいんじゃないだろうか?」
「そうですね」

「………………………………」
「………………………………………………………」
「でも考えてみたら、香澄は体力が有り余っているから、その状態だということか」
「まあね」
「じゃあ、するか?」


雪山で遭難しながらエッチとはなんて大胆な!
どう考えても無謀ではないだろうか!
だがオッケーがでてしまった以上、男らしく香澄はヤルのか。
終わった後汗が冷えて、ますます寒くならないのか!?

色々な疑問を胸に、『雪山でドッキリ!?』 完!
             ↑
        最初とタイトル違うような…。


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