春の夜



  「どこからどう見ても、女じゃないよなあ…」
オレはコウの裸の身体に手を滑らせながら呟いた。
「当たり前だ」
コウは憮然と答える。
色は白いけど、平らな胸。
適度に筋肉がついた身体。
そして、こればかりは見間違えようもない、脚の間にはくっきりと勃ちあがる、男の徴。
でもオレ、そんな男の身体のコウに欲情して、抱いちゃったりしてるんだよね。

「あっ…」
コウが甘い声をあげる。
もちろんオレがコウの中に挿入っていったからだ。
ほんの少し逃げる形になるコウを押さえつけて、身体を進める。
「んん…香、澄……」
コウの指がシーツを掴み、息が切なげに漏れる。
ちょっと苦しそうに顰められた眉が、ゾクゾクとオレを誘う。
女じゃないけど、でもこんなに色っぽいのは反則だよなー、なーんて思いながら、オレはコウの中を突き上げた。
動きながらオレは、コウのモノに手を伸ばす。
硬くなっているそれの先端に触れ、握って扱くと、コウの身体は震えた。
「あっ。あぁ…。香澄…もっと」

やっぱり男だもんな。
コウは挿れられるのが好きだけど、でもより敏感に感じるのは、やはりこちらのようだ。
コウがオレの下で喜ぶ姿を見たくて、オレは熱心のコウのそこを愛撫した。
吐息が、荒く激しいものに変わってくる。
「あっ…あっ。ああっ…」
きつく握り込まれてイキそうになったコウを、オレはちょっと意地悪で止めてみた。
「香澄…うっ…」
すっかりイク態勢でいたコウは、急に止められて苦しそうに唸り、目を開いた。
でもオレはそのまま、コウの中を再び突き上げ始める。
「コウ、気持ちいい? なあ」
「……」
応える代わりに息は荒くなり、コウのそこは熱くオレを締めつけた。

すげえ…いい。
ヤバイ、オレのほうが先にイッちゃいそうだ。

コウがあえぎ声を漏らしながら身体を反らした。
上気した白い肌。
その上にボツリと立ち上がっている、ピンクの悩ましい突起。
舐めてくれって言っているみたいだ。
気を逸らす目的もあって(すぐにイッたら情けないじゃん)もちろんオレはそれを口に含んだ。
女の子じゃなくても、乳首って魅力的だよな。
舐めて、しゃぶって、舌で転がしてみる。

「香澄…お願い…いかせ…」
中途半端でやめられた苦しさか、コウの声は切れ切れに掠れている。
無意識のうちに自分のモノに触れようとしたコウの手を遮って、オレは耳元で囁いた。
「イキたい?」
長い睫毛を切なげに伏せて、コウが小さくオレの下で頷く。

うひゃー…メチャメチャ可愛いぜ。

もちろん、コウの手管に乗ってしまっていることは、オレだって心の隅で解ってはいた。
でもコウのリードは恐ろしく巧みで、オレが上位でセックスしているように錯覚させてしまうのだ。
男だから、男がどうすれば気分が良くなるかを、コウはよく知っている。
コウとヤッていると、オレはいつだって、全部オレの手で、コウを悦くしてやっている様な気分になるのだ。

最初からそんな訳には、もちろんいかなかったけど
(だって男とセックスなんてしたこと無かったからな)
でもオレがコウとのセックスに慣れて来るにつれて、どんどんそれは巧みになっていった。
最初からして欲しいことをコウは露骨に口に出したが
(挿れてくれとか、舐めてくれとか、もっと奥まで、とかな♪)
もうそれは今では、リードされてるって言うより、おねだりのように聞こえる。

まあその、本来セックスってのは二人で楽しむモノだから、どっちがどうリードしていってもいいんだけどさ。
でも男としては、自分ばかりが翻弄されてる気分になってるんじゃ、面白くないじゃないか。
やっぱりオレが相手をイカせてるって感じられたら、気分いいじゃん。
現にオレのモノは、コウの中で更に硬く大きくなり、いまや爆発寸前になっていた。

オレは素早く手を動かし、同時に足も抱え上げてコウを責め立てる。
「あっ…ああぁっ…」
コウの声が一段と高くなった。
オレのモノを入れられて、オレを感じて、コウが悦くなってる。
喘いで、腰を擦りつけて、あそこもこんなに硬くして。
ムチャクチャ興奮する。

ああもう、オレも我慢の限界。

コウが背中を反らせるように震えて、オレの手の中で達する。
ほとんど同時にオレもコウの中で果てた。

 

 

 男とセックスすることに、オレはもう抵抗を感じていなかった。
まあ最初から、そんな抵抗があった訳じゃないんだけどさ。
だってコウってば、すげえ綺麗だし、最初からオレはコウに恋していた。
(コウの写真をオカズに、ひとりエッチしちゃったことも数知れず…)
でもその、確かに初めのうちは、少々違和感はあった。
あそこに入れた感じは、女の子と別に変わらないって思ったんだけど、なんてったってペニスがあるんだもんな。
人のナニに触るのなんて初めてだったし
(いや、兄貴のは触ったことあるか? 一緒に風呂入ってたもんな。ガキの頃だけど)
ましてや勃てたり扱いたりイカせたりなんて…。
そりゃもう未知の世界。

でも思ったよりオレは、あっさりクリアした。
だって、触るとコウが悦ぶんだもんな。
ベッドの上のコウは、オレしか知らない。
普段のコウだけ見てたら想像もつかないような態度を、アノ時はとるんだぜ。
大きな声上げちゃってさ、お願いなんてしちゃったりして。
普段は絶対聞けない声とか、見られないような媚態とか。
もうそういうのが見たくて見たくて。

「香澄…」
今だってコウは、オレにしがみついたりしてる。
こんな可愛い態度は、エッチ以外じゃ、まずとらないぜ。
一体何がぶっ飛んじゃっているんだろうね、ベッドの上のコウは。
それともこっちの方が、本来のコウなんだろうか?
「香澄、僕みたいなのを…」
「何? 何か言った?」
まだ荒い息をつきながら、切れ切れに囁かれるコウの声は、近くにいても聞き取りにくい。
なになに?
もしもエッチなことを言っているんなら、オレ絶対聞きたいっ♪(←ばか)

「僕みたいなのを、女役って言うんだろう?」

え?

オレは一瞬頭が、ちょっと白くなってしまった。
は? ええ?

コウってば、オレに抱かれながら、そんな事を考えてたわけ?
それとも今、いきなり思いついたのか?
もしかして、エイプリールフールに、黒羽高は女だって噂を流されたからか?
「えっと〜。あの嘘、気にしてるのか?」
「いや、どうして女だなんて嘘を流されたのだろうと思って…」
「そりゃー、コウが抜群の美人だからだろ?」
ベッドで女役をやっているからだ、なんて事は、まかり間違ってもないと思うぜ。
「女に見えるか?」
オレはブンブンと首を振った。
「見えない。…立派なモノを持ってるし」
なーんて言いながら、コウのアレをいじっちゃったりして。
コウが小さく声を漏らす。
さっきイッたばかりだし、敏感になっているんだよな。
「香澄…やめ…」
「やめなーい」

えへへ。
男だと、こういう悪戯も簡単だよな。
どうすれば気持ちいいのかも、よく解っているし。

「全然女じゃないじゃん。オレの手の中で硬くなってるのは何だよ、コウ」
「…やめ…ろよ」
呼吸が小刻みに上がっていく。
「じゃあ、やめさせれば?」
へへへ、ちょっと意地悪モードだ。
もちろんやめて欲しくなんて無いよな。
気持ちよさそうだもん。
触られるの、好きだろ、コウ?

再びコウの身体が熱くなっていく。
顰められた眉。口から漏れる吐息。
もちろんオレのモノも、再び反応して勃ちあがっていた。

しかし次の瞬間だった。
コウはいきなりオレの腕を取ると、くるりと身体を入れ替えて、オレをシーツに押し倒した。
えっ?
何が何だか解らないうちに、オレの身体は押さえつけられ、あっさりコウの下になる。
吃驚して見上げると、色っぽく上気したコウの顔があった。
「香澄…」
上から被さるようにキスをされる。
それからコウは、なんとオレの両脚を、抱え上げるように持ち上げたのだった。
「えっ? おっ、おい。コ、コ、コウっ…!?」

もしかしてオレ、恋人になって初めて、コウに挿れられちゃうのっ!?

わーっ! 待って待って!
確かにオレ、最初のうちはそういう事も考えないことはなかったけど。
でも今突然なんて、それは心の準備ってもんがっ……。
そういう事は、ゆっくりじっくり時間をかけて。
だってオレッてば、ほらっ。
なんつーの? その。

初めてだし―――っ!!

 

 

 しかし、そこまでだった。
抱え上げた脚の間に、コウは身体を入れてはきたが、特にそれ以上進むこともなく、そのままオレの上に被さるようにして倒れかかってきた。
オレがその身体を抱きしめると、耳元でコウがため息をつく。
「……あ…ああ。ビックリした」
オレだって、思わず息を吐いちゃうよ。
突然すぎるぜ、コウ。

「やっぱり男だったら、挿れられたくないものか?」
オレの上に倒れたまま、コウが囁いた。
「え? いや、ちょっと…かなり吃驚しただけ。いきなりは難しいでしょう、コウ」
「僕は、いきなりだった」
「えっ? あ、そうなの」
「酔わされて、ベッドに連れて行かれて、最初から挿れられた」
ううっ…。
初体験の話なんて聞かされて(しかもあの男とだろっ!? ちょっとムカつく)
オレ、どう答えりゃいいのさ。
「でも僕は、悦んだんだ。初めてだったから、痛かったけど…。でも僕は、そうされたかったんだ」
ああ、そうですか。

初めてだから…という所は、ちょっぴり下半身にクるものがあるけど。
あの男との話は、あまり聞きたくないな。
(ああ、コウの初めての時を見てみたかったよ。
初めてで痛がるコウを優しくリード。なんて萌えるシチュエーション。やっぱオレが年上だったらなー。はあ…。)

「香澄は、僕に挿れられるのは、嫌か?」
「えっ? あ…そう、だなあ。嫌じゃないよ、もちろん」
「本当か?」
「うん、その…。コウがどうしてもそうしたいって言うなら、いいよ。
だってまあその。最初のうちは、一応覚悟してたもんな。
男とこうなりたいって考えたら、一応その…抱かれることも、少しは考えないと…」
「でも今、身体が拒否した。香澄」
うっ…。
ちょっと痛い所を突かれてしまった。

そう…なんだよなあ。
確かにオレ、無意識のうちに身体が逃げていた。
コウのことは大好きだし、今は当たり前のようにオレがタチだけど。
コウがオレに挿れたいっていうなら、別にいいぜって、思っていた筈なんだ。
(最近忘れてたけど)
でも、身体は逃げてしまった。
オレはコウのこと、こんなに好きなのにさ。


「いや、いいんだ香澄」
コウはオレの身体を抱きしめた。
「それが普通なんだ。僕がヘンなんだ。男の身体にしか欲情しない」
「別にゲイはヘンじゃないだろ? 単なる嗜好の問題だし。
それにオレ、確かに今逃げちゃったかもしれないけど、それは慣れてなかったからだよ。初めてだったわけだしっ」
「香澄…」
思わず大きな声が出てしまった。
だってオレ、本気でコウのこと好きなんだから。
その事だけは誤解されたくない。

「だから、ゆっくり優しくやってくれればさ、コウに抱かれるのは嫌じゃないよ。ああもう、もちろん全然。ちーっと怖いけど、でもそれはやったこと無いからだ。
オレはコウが好きだよ。ホントに大好きなんだから。いつだってこんな風に抱き合っていたいんだから。
だから、その…。コウに抱かれたい。
…もちろんコウが、どうしてもそうしたいって言うならだけど。
でもホントにそうしたいなら、オレ、いつでもいいぜっ!

「…………」
上に被さったコウの体が震えていた。
どうしちゃったのさ。
コウ、ええーっと…。
一瞬クエスチョンマークが飛んでしまったが、すぐにオレは気付いた。
コウの奴、笑ってやがる。
おい!
勇気を振り絞って返事をしたってのに、なんだよその態度!
「コウ、なんだよっ! 何で笑ってんだ」
「香澄…。いつでもいいぜって…。それじゃまるで、何か試合でもするみたいじゃ…ないか」
声、笑って震えてやがる。

ううう、畜生。
確かにちょっとばかり『来るなら来やがれ!』っていうか、覚悟決めすぎた、みたいな雰囲気はあったけどよっ。
でも、涙にじませて笑うことないじゃんか。

「面白かったよ、香澄」
「…悪かったなっ」
「そうじゃなくて。嬉しいよ」
「ああ?」
コウは唇にキスしてきた。
触れあって離れるような、挨拶みたいなキス。
「……」
オレはまだ、ちょっとブーたれた表情のままだった。
でも、オレッてばホントに単純。
こんなキスくらいで、簡単に機嫌が直ってしまうらしい。

「別に、女だとか男だとか、拘りがある訳じゃないんだ。別に何処で女だと言われていたって構わない」
「そうなの?」
「ああ…」
コウの表情はやわらかかった。
「女は、別に侮蔑の表現じゃないだろ?」
「そうかもしれないけど」
でもオレだったらヤだな。
オレの事、女だとか言う奴がいたら、そいつを殴りに行くかも。
う〜ん。
女という言葉自体には侮蔑の意味はないかもしれないけど、男の事を女って呼ぶ時は、あるような気がするなぁ〜。
やっぱなんか、馬鹿にされたような気がするんだよな。
コウの場合は、そうじゃなくて、あんな綺麗な男がいるだろうか? もしかして女だったりして、って事なんだろうとは思うけど。
でも、嫌じゃないのか、コウは。
それは、オレ的には、ちょっぴり不思議な気がする。

「時々、女に生まれたら良かったかもしれない、と思うことがあるよ」
「へええ」
「女だったら、僕が今感じている色々なことは、最初から関係ないんだ。だから悪くなかっただろうな。女に生まれても」
「それだけ美人なら、女に生まれてたら、そりゃー凄くトクだったろうな」
「そうかもしれない」
コウは少し寂しそうに笑う。
「あっ! 今のはコウが女だったら良かったのに、ってオレが思っているって事じゃないぜ。誤解すんなよ」
オレは慌てて言った。
「第一オレは思うんだけどさ、今のままコウが女になったとしたら、女になってもゲイなんじゃないか? そうしたらさ、コウは今度は女が好きになっちゃうんじゃないのか?」
「えっ!?」

コウは目を見開いて黙り込んだ。
ものすごく虚を突かれたって言うか、目が点って言うか、完全に空白の顔をしている。



しばらくしてから、やっとコウは切れ切れに呟いた。
「………香澄…。考えても…みなかったよ、それ」
コウはなんだか、真剣な顔で考え込む。
「そうか、成程。僕が僕のまま女になったとすると、ゲイの僕は、今度は女が好きになってしまうのか。うん、確かに理屈から言ったらそうだな。
じゃあ香澄とは絶対恋人にはなれないって事か…」
「ええーっ。嫌だよオレッ。コウが女だったら、オレは完全対象外って事じゃないか。
じゃあ男がいい。ぜーったい男がいい。女になったコウは、すげえ魅力的だろうなって、ちょっと思っちゃったけど、オレの事好きになる可能性の無いコウなんて絶対反対。コウは男で決まり!」
「決まりって、僕は男だが…」

「うん、だからさ、男で良かったよ。ホント」
「香澄?」
「そういう事だろ? 今の状態が、一番良いって事だろ、コウ」
オレはニヤッと笑ってみせる。
「オレが男でさ、コウも男なの。それでコウは、オレの事が好きなんだ」
「香澄…」
コウは目を細めて薄く笑うと、再びキスをしてきた。
今度は少し長めのキス。

う〜ん。甘い。
コウっていい匂いがするよな、って思う。

「そうだな。きっと香澄の言う通りだ」
唇から出てくる、コウの声も甘かった。
「香澄がそう言うなら、僕は男で良かったんだろう」
「うん、もちろんそうさ。こんな風に、コウと出来ないなんて、オレ絶対嫌だ」
言いながらコウの身体をあちこち触る。
気持ちいいよ。コウに触れるのってさ。
「ああ。僕も香澄に抱かれたい」
「あ…その件だけど。ほ、ホントにいいぜ。コウが、その。オレを抱きたいなら、そうしても」
「香澄、声が震えてるぞ」
「そ、そんな事無いって!」

コウは首を横に振った。
「いや、僕は香澄に抱かれたい」
「…ホントに? オレはマジに構わないぜ」
「いいんだ。本当に僕に拘りはないんだ。香澄にされるのは気持ちがいいし」
言いながら、コウの手が下の方に、すうっと伸びる。
「うっ…」
「僕はコレが好きだし」
「コウ…う…んん」
「香澄のは、すごく巨きいし、な…」
コウの指がオレのモノに絡みついて、うねるように愛撫する。
うううっ…。
やっぱりコウはメチャクチャ上手い。
ど、どうやったら指でそういう触りかた出来るわけ?
ああもう、こんな事してもらえるんだから。
本当に、ホントーに、コウが男で良かったぜ。



 まあ、そういう訳でオレ達は第2ラウンドに突入!
しちゃったわけだけど。
オレのを受け入れるコウを見ながら、オレは改めて考えてしまったのだった。

オレはコウのことが本気で好きだけど、でも、どんなに好きでも、それでもやっぱり身体に何かを入れるっていうのは怖い事なんだ。
今迄、好きなら当たり前だろ、みたいに思っていたけど。
挿れられる立場に直面して、初めて実感しちゃったよ。
確かにコウの身体も、挿れる瞬間だけは身構えて逃げるもんな。
挿れちゃえば、あとは今みたいに求めてくれるけどさ。

「香澄…そこ…は…」
コウの唇から、掠れた声が流れる。
「ここ? ここが何? ここがいい?」
揺さぶるようにコウの中を攻めたてると、コウのアレが硬くなるのが解った。
うん。身体が正直だって事も、男のいい所だよな、なんて思う。

どんな気分でオレを受け入れてくれるのかが解った気がして、オレは嬉しかった。
怖くないぜって、抱きしめてやりたい。
だってこれは、愛してるって行為だから。
でも、それでも怖いって気分は少し解ったので、できるだけ優しくしようと思う。
いやその、ちょっと制禦きかない時も、あるかもしれないけどな。
(若いからさ…汗)


エイプリールフールはもう過ぎちゃったから、オレは嘘はつかない。
オレは、コウが男でよかった、って思う。
女だったら、って考えた事は、そりゃーあるけど。
だって、すげえ美人になること間違いなしだもんな。
でもオレは、きっとコウがどっちでも愛してる。
だから、オレを好きになってくれるコウが男の方だというなら、オレは迷わず男を選ぶよ。
だってオレ、コウが好きなんだ。
コウとこんな風になること以外は、考えたくないんだ。

「かす…み」
コウが腕を伸ばしてくる。
オレはその腕にキスをして、コウの上に覆い被さり、唇も味わう。
「ああ…はぁっ…」
耳元でコウが喘ぎながら、微かに呟くのが聞こえた。

オレの名前と、それから、欲しかった一言。

『愛してる…』

そんな風に聞こえたのは、幻だろうと思う。
でもコウの身体は、確かに悦んでいた。
オレがコウを抱きたいように、コウもオレに抱かれたがっていた。
だからオレは、最高に幸せな気分で、コウを抱きしめたのだった。

END

エイプリールフールの起源