地獄より熱く、愛より甘く2

scene1

三週間。
もちろんその間誰ともセックスしていない。
自分ですることさえ、なかった。
冬馬がいなければ、それは全て意味がない。
自分は、男としては出来損ないなのだろうと、黒羽は思う。女にも興味がない。かといって、冬馬以外の男に惹かれるわけでもない。
だが単に淡泊だ、というよりむしろセックスを嫌悪していることに、黒羽自身は気づかない。
 
ベッドに乱暴に黒羽の身体を倒すと、ほとんど前戯も無しに冬馬は押し入ってきた。
慣らされることも潤されることもなくそこを貫かれて、痛みに黒羽は声を上げる。
声を上げて、息を継いでいるうちに、痛みが鈍くなっていく。いつか、それが快感にすり替わる。黒羽はそう学んでいた。
後から貫かれて、体の中を抉られる。
久しぶりの情事に、気持ちよりも先に身体が応えた。
自分のモノが勃ちあがり、びくびくと震えるのが解る。
冬馬は黒羽の足を大きく開かせ、その様を楽しんだ。勃ちあがるそれにはわざと触れずに、抽送を繰り返す。
深く、浅く身体を抉られるその動きに、黒羽の喉が鳴った。
黒羽の身体を、冬馬は熟知している。何処が、どんなふうに感じるか。
その、敏感な部分を突き上げられて黒羽はあっけなく達した。

冬馬は声をたてて笑う。
「いやらしい子だなあ。オレは触ってないぞ。これだけでいけちゃうのか。よっぽど溜まってたのかな」
荒い息をついている黒羽の中を小さく揺さぶりながら、耳元で囁く。
「オレがいない間、誰かとやってなかったのか?」
「そんな事…」
「上にはお前のファンがいるだろう? 一言欲しいって言えば、誰だって突っ込んでくれる」
「涼一…」
「ん? 違うのか? 欲しいって言ってるぞ。ここはさ」
「涼一のだけ」
「なんだって?」
「涼一しか…欲しくない。僕…は涼一のものだか…ら」
「ふうん。可愛いなあ、コウは」
囁きながら笑う。耳に息がかかった。
「だけどね、そんな男はつまらないんだよ、コウ」
言い放って、冬馬は黒羽の中から抜け出した。
「あっっ」
身体を満たしていたモノを失って、不安が押し寄せる。
「りょう、いち」

なにをされてもいい。
でも、冬馬に棄てられるのだけは、耐えられない。冬馬を体の中に感じられないことが怖い。

そんな黒羽の不安をよそに、冬馬はロープを持ち出してくると黒羽の左脚を天井から下げられたフックに吊した。それは冬馬の機嫌が良いときよくやる行為だったから、黒羽は少し安心した。
片脚を吊られた不安定な格好で、拡げられたそこに道具を押し込まれる。
そうしておいて、冬馬は黒羽に口で奉仕することを要求した。
身体の奥で蠢く道具の圧迫感。吊る下げられた脚の痛み。喉を突き上げられて、息が詰まる。
その全てがやがて黒羽を快楽の頂点に導く。冬馬の望む通りに。

冬馬の欲望を喉の奥に受けながら、黒羽ももう一度、頭の中が真っ白になっていくのを感じた。
 

to be continued