地獄より熱く、愛より甘く2

scene2

コウの自由を奪っておいて、その体を弄ぶ。
嫌だと思いつつ、諾々と従うそのようすが冬馬の嗜虐心をそそる。
少しも楽しんでいないのに、身体だけはちゃんと応えてくる。
身体で応えることが、誠意の証だと思いこんでいる。
馬鹿で可愛いオレの人形。
「好きだよコウ」
耳元に吹き込んでやると、体が震える。
「いい子だ…」
滑らかな白い肌に唇と手を這わす。

最高だ。コウ。
オレは何でも最高が好きだよ。
お前くらい綺麗で従順で、役に立つ魅力的な人形はいない。
全部オレのものだ。
白い肌に傷をつけるのも、壊すことができるのもオレだけだ。
だーれにも手は出させない。

ずっと小さい頃、近所の女の子と人形を階段から投げ落として遊んだ。
なにが面白かったのか今となっては謎だが、その時はひどく興奮した。
だけどオレはもう大人だから、その衝動の正体に気づいている。

勃ちあがった男の部分を玩びながら、コウの中に入れたものを乱暴に出し入れする。
征服し、支配し、服従させる。
ただ、それだけの衝動。
世界で一番面白い、ゲームだ。

オレの動きに反応して、コウの声が高くなる。
もう何も見えないだろ?
ただ感じるだけ。
「あぁっ…涼一。りょう…。あぁぁ」
「ご褒美だよ、コウ」
異物の代わりに身体にのしかかってやると、一瞬だけ黒羽の瞳の奥に嬉しそうな光が宿った。
オレに姦されたいのか。そんなに?
オレしか頼るものがない、オレだけにしがみつく、どうしようもない人形。

この血に塗れた手で、どれだけの命を屠った?
この白い肌を持つ身体で、どれだけの男を惑わした?

それでも結局こうやってオレの手の中に帰ってくる、オレだけの人形。
大丈夫だよ。
本当にオレはお前が好きなんだ。
まもなくオレが世界を手に入れたら、一緒に連れて行ってやるよ。
だからいい子で、待っているんだ。
オレのいい子のままで、オレの言う通りに動くんだ。
そうすればご褒美をあげる。
こんな風にまた、愛してやるよ。
コウの身体が痛みと快楽に反り返る。
本当のコウがどんな男だったのか、もうコウ自身にもわからないだろう。
ゆっくりと造りかえてやったから。
身体も心も、時間をかけて…。


それでも、冬馬は何度も黒羽に誓わせた。

『涼一だけがいればいい…』

言葉で縛る。
籠の扉は、決して開けない。
それは不思議な用心だったが、冬馬は何故自分がそうしたいのかは、よく解っていなかった。

まあいいさ、と思う。
あと少しだから。
黒羽の背が反り上がり、何度かめの絶頂に達する。
眉を顰め、快楽の余韻に震える体に、冬馬はキスを降らせた。
最高だよ、コウ。
そして遠くへ行こう。二人一緒に。
永遠がやってくる。
甘く、熱い地獄か。それとも退屈な天国か。
どちらでもいい。
お前は全部オレのものなんだから、オレと一緒に行くんだ。

冬馬は飽きることなく、黒羽の身体を嬲り続ける。
黒羽の上げる悲鳴が、既になされた約束のように、冬馬の耳に心地よく響く。
世界もお前も、もうオレの手の中だ。
あとは握るだけ。どうにでもできる。
恐ろしくハイで、気分が良かった。

冬馬の用心が、ほんの少しだけ緩む。

秘密を教えてあげる…。
冬馬は黒羽の耳に、崩壊の呪文を唱えた。

『コウの両親を殺したのは、オレだよ…』

END