愛しのバレンタイン
「いいよなー、黒羽は…」
砂城西署捜査一係の大部屋の中に、高田の大きなため息が響く。
何のことを言っているのか、部屋に待機する男達は全員承知だ。
解ってないのは黒羽と、ここしばらく個人的にバタバタしていた白鳥だけだった。
「僕の何処がいいんです?」
「おまえ自身がいいんじゃねえよ。おまえが明日貰うものがいいんだってーの」
「明日…」
「あっ…! 2月14日。バレンタインじゃん明日は」
さすがにこの辺は男。
怪訝そうな黒羽より一瞬早く、隣の白鳥が反応した。
高田はため息をつく。
「毎年すげーぞ、こいつのロッカーとか机の横とか。紙袋にどっさりいっぱい。何か高そーなチョコばっか。交通課の婦警だけじゃなくて、その辺の女子高生とかも渡しに来るんだ。ちょっとした見物だぜ」
「…そういう時期か」
「いいじゃないか、ありがたーくもらっとけよ。ちぇっ。贅沢だぞ。義理チョコじゃねえくせに」
「それが困るんじゃないか」
黒羽は顔を上げて抗議した。
高田が、ちょっと『おっ』と言った顔つきになる。
仕事以外で口を開く黒羽など、殆ど見ないからだ。
「バレンタインはイベントだろう? 義理チョコなら、その場でお礼を言えばいい。だがそうでないなら、相手にどう答えればいいんだ」
「お…おまえそんな事考えてたのかよ。じゃ、もしかして今までとか…」
「えっ、コウ! まさか本命チョコの人達に、全員断りを入れてたの?」
黒羽は憮然と頷いた。
「直接会わないと、失礼だ。向こうが本気ならなおさらだ」
「………」
高田と白鳥は顔を見合わせた。
「そりゃまた、マメなことを」
「そのくらいマメじゃないと、女の子は来ないって事じゃないの。高田さん」
「黒羽くんが直で会いに来たら、たとえダメでも女の子は喜ぶよねえ」
桜庭がにやにや笑う。
「桜庭さんからは、チョコないんですかっ?」
「あー…どうしようかな。オバサンからも欲しいの?」
「14日に一個ももらえない男の悲しみが解りますか!? 桜庭さんっ」
「…義理でもオバサンからでも、一つもないよりマシだと」
部屋の男達は一斉に頷いた。
「無いよりマシで貰うのか? 桜庭さんから貰いたいんじゃなくて?」
黒羽の言葉に、桜庭はニッコリ笑った。
「そうそう、その通り。と、言うわけで、今のマシ発言に頷いたヤツには、全員チョコ無し。女性の気持ちがわかってない男どもには貰う資格無し。黒羽くんにはあげるからねー♪」
ぎゃーっと男の悲鳴が部屋中に響き渡った。
「オバサンじゃないです! 桜庭さんは綺麗ですーっ」
「あたしオバサンだもん」
「オバサンな桜庭さんも綺麗ですーっ」
「マシとかじゃなくて、桜庭さんから欲しいー」
「高田は入ってくんな。奥さんから貰えばいいだろう」
何やら騒ぎ立てる男どもを、桜庭は『ハイハイ』と適当にあしらう。
白鳥は隣の黒羽をそっと見上げた。
バレンタインかあ…。
一応女の子のイベントだからな。
コウはやらないだろうけど。
でも、ううん。チョコは確かに欲しいかも。
想いが通じたのか、いきなり黒羽が白鳥に聞いた。
「香澄もチョコ欲しいのか?」
「えっ? う、うん」
突然だったので、思わず声がうわずってしまう。
だってそりゃー、恋人からのチョコって、イベントだもんな。欲しいことは欲しい。だけどコウは男で、オレも男で…。
でも、もらえるのかな? オレ。
「そうか…」
しかし黒羽の声のトーンは妙に暗くなり、そしてそのまま黙ってしまった。
うっ…。
やっぱり女の子ばかりのチョコレート売り場に行くのは憂鬱なのか?
そんな事を思ってしまう。
確かにいくら綺麗とはいえ、男は男。
あの女まみれの売り場にでかい男が並ぶのは、さすがに出来そうもない気がする。
まあいいや。基本的にバレンタインは女の子のもの。
コウに期待するのは的はずれってもんだよね。
そう思ったらすっきりしてしまい、白鳥はそのまま忘れてしまった。
だが隣の黒羽はしばらく何かを考え込んでいたようだった。
次の日、2月14日。
特に事件を抱えていない部署には、さすがに表立ってはいないが、それでも少々浮かれた雰囲気が漂っていた。
「はい、落とし物を届けに来たんですけどー、とか言ってわざわざ交番じゃなくてここに来て、ついでにチョコを渡して欲しいんですけどー、な女子高生ちゃん達から、黒羽くんへ」
長い口上を述べながら、高田が段ボール箱に入ったチョコの山を、どさりと黒羽のデスクに置く。
「うっそー、これ全部チョコ?」
白鳥は口を開けて箱の中を覗く。
「序の口です。まだ交通課の婦警さん達から来てないし」
「何で高田さんがえらそうに言うのさ」
「うるせえ、じゃあおまえが運べ! 人のチョコを運ぶむなしさ、おまえが味わえ」
「すまない」
黒羽が短く謝った。なんとなく暗い。
まあその、数が来るって事はそれだけマメに人に会って、しかもゴメンナサイしなきゃいけないって事なんだから、憂鬱だよな。と白鳥は思う。
ただでさえ仕事以外で知らない人に会うことがコウは苦手だ。
そのうえ相手にとっていいことを言う訳ではない。
うーん。モテるってのもそれなりに大変だ。
だけど…。
白鳥は少しだけにやけた。
まあ今まではさ、今まで毎年女の子に断りの返事を入れてきたのは、コウがゲイだから、なんだろうけど、今年は理由にもう一つ付け加わっているはずだ。
オ・レ。ふっふっふ。
今年はコウにはオレって恋人がいるもんね。
もうコウはオレのもんなんだから、誰ともつきあわねーの。
堂々と言えないとこが、ちょっと辛いけどな。
でもまあ、後でゆっくり食事でもしよーぜ。
って、まだコウに言ってないのでした。店予約してること。
バレンタインに急に店を予約するのはそれなりに大変だったけど、砂城の郊外にいい店を一軒見つけたんだ。
小さいフランス料理の店でさ。
ちょっと遠いけど、遠い方がオレ達にとっては都合がいい。
やっぱり知ってる人に見られちゃうのはなんとなく避けたいから。
えっへっへー。
その後のだんどりくんを頭の中でぐるぐるさせてにやついていると、いきなり自分の前にも何かの包みが置かれた。
「へっ?」
顔を上げると交通課の雅ちゃんがにこやかに笑っている。
「白鳥くーん。はいっ。チョコ」
「えっ? えええ? オレにー?」
「義理よー、いっとくけど」
「いい、いい。大好き雅ちゃん」
「交通課の女の子達からね。皆さんにも、どうぞってことで」
にっこり笑って交通課のおねーさん達は帰っていった。
部屋の男どもの顔は、皆だらしなくやに下がっている。
へえー。オレにもチョコ。
なんか義理でも貰うと嬉しいよな。やっぱオレも男って事か。
機嫌良く振り返った所で、黒羽と目があった。
一瞬ぎくりとする。
えっ? ええっ? オレ何かした?
まったく表情がないけど、最近のオレには解る。
なんとなく怒っているぞ、コウ。絶対怒ってるって。
でもでもどうして?
手の中のチョコを思わず見つめる。
だけどチョコなんてコウだって唸るほど貰ってるじゃん。
オレのなんて義理だぞ、義理。
そう思った所で、黒羽の視線がふい、と逸れた。
ううう。コウの奴。
その態度がどんなもんか、後でちゃんと問い詰めてやろーじゃないか。
白鳥の所には、その後結構な量のチョコレートが届いた。
「なんだよおまえ。黒羽だけじゃねえのかよ。思ったよりモテやがるな」
警部補どのをおまえ呼ばわりはいかがなものか、と思うが、チョコの量に免じて許してやることにする。
「そりゃー、オレだって、それなりに顔いいしー」
「言ったな、てめえ」
「ワイシャツだって、アイロンあててますーだ」
「そーいうカッコばかりの男は嫌われるんだよ」
「じゃ、チョコの数比べてみようか。一個、二個…」
へっへっへー。かなり楽しいぞ。
オレだってモテるんじゃん。
ふと顔を上げると、コウが部屋から出ていく姿が目に入った。
ありゃ、コウ。
隣のデスクを見ると、とてもじゃないが置ききれない量のチョコレートが積み上げてある。
一時的にロッカーにでも置きにいったのかな?
なんとなく黒羽の姿を追って部屋から出る。
彼はそのままふい、とトイレに曲がってしまった。
何だ、便所かよ。
さっきの目つきが気になってつい後をつける形になっちゃったけど、別にどうという事はないみたいだ。
まっいいか、ついでにオレも小便。
なーんて軽い気持ちでトイレに入った所で、オレ達は大げんかになった。
…筈だった。
「あっ…」
さっきからオレはコウの声を抑えるのに懸命になっていた。
何で、どーして?
頭はぐるぐるしちゃうけど、コウの中に入り込んだオレの分身はもう収まりがつかない。
「ああっ…」
コウの口を押さえながら、後ろから突き上げる。
なんか、どうしてまた、トイレでこういう事になってるんだよ。
前にやめようって思っただろーっ。
オレ本当はこういう所でエッチするってそんなに好きじゃないんだよー。
そりゃまあ、妄想はするよ。
人には言えないこと。かなり変態チックな事だって、頭の中では展開させる。ビデオとか写真集とか見たら興奮だってする。
でも、ホントにやりたいかって聞かれたら、なんか、よしておきたい。
オレはね、フツーにエッチしたいの。
ちゃんと部屋とかホテルとか、ベッドで。
オレ自身も楽しんで、相手も気持ちよくさせて。
キスして、あっちこっち触って。
そーいうセックスがいいの。
だってトイレでやったりとか、落ち着かなくて、せわしなくて、窮屈じゃんかっ。
やってるヤツの気が知れねえ!
…って今ヤってんのはオレだよ、オレ。
きっぱり言って、白いハンカチを口に詰めたコウの感じてる姿は、かーなーり、アブノーマルテイストだ。
言っとくけど、これ詰めろって言ったのはコウだからね。
…言われたとおり詰めたのは…オレだけど…。
「…っ」
小さくうめいて、コウがイった。
オレは…すみません。一足お先にいかせていただきました…。
「はあっ。はあっ。はあ…」
ハンカチを口から取りだしたコウは、大きく息を付いた。
「ヤっといて何だけどね、コウ」
「うん…」
コウは小さく頷いた。
あの後のコウはちょっとぼーっとしていて、とっても可愛い。
ここがトイレじゃなかったら、実はもう一度ぎゅーっと抱きしめたいくらいだ。
「この間誰もトイレに入ってこなかったってーのは、やっぱり奇跡に近いよ。もう、ここでこういう事するのはやめよう。なっ?」
「うん…」
ホントに解ってんのかなー。
だいたい今日はフランス料理店予約してあるんだぜ。
こういうお楽しみは、ホントはその後するもんだよ。
オレが本当はしたいように。ゆっくりと。なっ。
「高田さんに…」
コウが視線を合わせないまま白鳥の胸で呟いた。
「なにさ」
「高田さんに言われたんだ。本命チョコが欲しくなかったら、さっさと結婚しろって…」
…うひゃあ。
高田さんも知らないとはいえ、そのセリフはきつい。
そうでしたか。そんで、機嫌悪かった訳?
「香澄は、誰かと結婚の予定があるのか?」
「…それは一体どういう意味さ」
だいぶコウのことは解ってきたような気になっていたが、時々やっぱりコウの考えが、全然解らない時がある。
だいたいこうなった原因だって、訳が判らないものだった。
続けてトイレに入ったオレに、コウはよかったな、と言ったのだ。
「チョコレートが貰えてよかったな」
「おっ。それは嫌味か? コウ。あーんなに貰っといてオレに言いますか、そのセリフ」
オレはふざけて、ファイティングポーズを取る。
「やっぱり女の子がいいだろう?」
「はあ?」
「だって昨日チョコが欲しいと言ってたじゃないか」
コウの声が少しばかり荒くなる。
「な、何の話だよ、コウ。チョコは欲しいよ、当然だろう? 何だよ、自分が貰えるからって。だいたいコウ、さっきだって怒ってただろ。オレ怒るようなこと何かしたかよ」
「怒ってなんかいない」
「嘘つくな! 睨んでたくせに。言いたいことあるならはっきり言えよ。男らしくねえぞ!」
だあーっ。どうしてケンカモード?
コウの奴言ってることがメチャクチャだぞ。
オレはかなりカリカリして、思わずコウのことを突き飛ばした。
したら、何かよろけやんの。
うっそでしょ。オレに突き飛ばされたくらいでよろけるようなコウじゃない。
普通はな。そうは思ったが、思わず手を伸ばす。
したらそのまんまトイレの個室に引きずり込まれて、後は…、なだれ込んでしまった。
よろけたのがマジだったのか策略だったのかは解らないけど、仲直りの方法の一つが『合体』ってーのは、確かに正しいような気がする。
だいたいアレの後って、何だか色んな事がどーでもよくなっちゃう感じするもんな。
コウの言ってることは相変わらず解らないが、口調だけはさっきのつっぱらかったものに比べてかなり素直な感じがした。
「結婚の予定なんて無いよ」
「チョコレートで、誰かに告白されたのか?」
白鳥はぶんぶんと首を振る。
「オレの全部義理だぞ」
「僕のはかなりの割合で本命チョコというものらしい」
「うひー…」
それって自慢?
もしかして、自慢されてるの? オレ。
「まだ14日は終わりじゃない。これから香澄の所にも来るかもしれない。そうしたら女の子とつき合うんだろう?」
「…コウ? オレ、あんたの言ってることが、さっぱり解んないんだけど」
「だってチョコレートが欲しいって昨日言っていたじゃないか。チョコが欲しいって事は、女の子から告白して貰いたい、と言うことなんだろう?」
…うひゃー。
やっと何だか繋がった気がする。
「オレはコウから欲しいって答えたつもりだったんだよ。そりゃー女の子からも貰えれば嬉しいけど。でもそれはイベントとして。ホントはコウから欲しい。昨日言ったのはそういうこと」
コウの目が大きく見開いた。
「えっ? ええ?」
「でもコウは男じゃん。だから、別にいいや、ってそう思ってたの。OK?」
「あっ…ああ」
なんかコウの顔が次第に赤くなっていく。
「だけどコウ。それって、じゃあ嫉妬? オレが隣でチョコ貰ってるの見て、気が気じゃなかったって事?」
「う…僕は」
「僕は?」
「香澄が…女の子とつき合いたいなら、仕方ないか…って」
「嘘だね」
「嘘?」
「嫌だったんだろ? オレが他の誰かとつき合うなんて、コウ絶対嫌だっただろ? 男らしくはっきり言えよ」
コウが自分の個人的なことに関して判断を人任せにする傾向があるのは、だんだんと解ってきたことだ。
だからオレは出来るだけ口に出して言わせることにしてるんだ。
コウが何を考えているのか。
自分が本当はどうしたいのか。
コウが自分自身から逃げないようにするために。
それに聞きたいじゃん。
コウがこれから言うことは、絶対オレにとって気分のいいことに間違いないんだから。
きっと告白だから…。
もちろん、その予想は違わなかった。
オレの思ってたことと、ちょっと言い方は違ったけどな。
「もう女の子から、チョコは貰わない」
「コウ?」
「香澄が女の子に告白されると思ったら、すごく辛くなった。だから…」
「コウ!」
オレは思わず抱きしめちゃったね、コウのこと。
そんでもってチュウだ。
ここがトイレじゃなかったら、すっごくいいシーンだと思う。
ううう。だからトイレなんかでヤルの嫌なんだよ、オレはっ。
「いいよ、いいよ。あの量のチョコ、急に貰わなくなったりしたら、みんなに絶対勘ぐられる。せっかく持ってきた女の子達も可哀想だろ? チョコレート会社の人だって急にチョコが売れなくなって、がっくりだ」
「でも…」
「だいじょーぷ。オレは解ってるんだから。毎年断っているんだろ? そんでその理由は、今年はオレだよな。そうだろ?」
「ああ…」
やったー。やっぱり告白じゃん。
ここで一発チョコがあれば、完璧バレンタイン。
「香澄、チョコが欲しいのか?」
オレは大きく頷いた。
「コウからならなっ。でも気にしなくていいぜ。バレンタインは女の子のイベントだ。女の子達に混じって、チョコを買うのって恥ずかしいだろ?」
「じゃあ明日買おう」
「ええ?」
「確かに僕は男だから。でも香澄がいいなら、あした香澄のためだけに買う」
いやもう、もちろん異論は全然ありません。
ひゃー、メチャクチャ嬉しいかも。
「うん、うん。ぜーんぜんオッケー。何かすっげー嬉しいよ、オレ」
「…その代わり、申し訳ないが」
「何?」
「後で僕に来たチョコレートの仕分けを手伝ってくれ」
「うっ。あの量を。まあその、確かに断りに行かなくちゃいけないんだし。し、仕方ないか」
「結婚はしない訳だから、毎年よろしく」
うげげっ。
コウの顔を見ると、すましてそう言った後、くすくすと笑った。
すっごく珍しい顔。
ここがトイレじゃなかったら、とってもいいシーンなのに。
オレはやっぱりそう思った。
ものすごーく腹の立つことに、なんとフランス料理店には行けなかった。
何故かというと、せっかくいい雰囲気に落ち着いたあの後、すぐに事件が勃発したからだ。
廃屋で若造同士が撃ち合い。オレ達向きの荒事だ。
だーーーっ。畜生ーっ。
店を予約するの大変だったんだぞーっ。
よりによって今日事件なんか起こしやがって。
2月14日に事件起こすヤツはみんな死刑だ。
おまえらチョコ貰えなかったんだろーっ!
オレはもう、やけになってバカなヤンキー共をぶちのめす。
「な、なんか白鳥くん、今日は燃えてません?」
「うんっ、オレ燃えてるよっ! 高田さん」
まだコウにも店の事言ってなかったし、秘密だったから誰にもグチることは出来ない。
オレはストレスを腹に溜めておくような器用なことは出来なかったから、もちろんそこで全部吐き出した。
そうさ、2月14日にケンカなんかするヤツが悪いんだ。
クリスマスも許さねえぞ。
ついでにオレの誕生日もやめろ。
そう、正義の味方にも、プライバシーってヤツが必要なのだ。
それだけは絶対確かだよな。
「香澄、向こう側から回るぞ」
「おうっ」
コウの奴は妙に生き生きとしていた。
はあ〜。仕事が好きなのね、きっと。
まあ確かに仕事の時のコウは輝いてる。
オレだってそりゃ、天職だとは思っているけどさ。
でもまあ、でも、それでもな。
バレンタイン司教は結婚できなかった恋人同士を結婚させてやったんだ、と言う逸話がある。
オレとコウは結婚は無理だけど、でも恋人同士だ。
だからぜひ。
どうぞお願い。
『世界中の正義の味方に、恋の楽しみも遊ぶ時間もありますように』
愛しのバレンタインにオレは祈った。
END
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